10月5日、兵庫県弁護士会姫路支部会館で、姫路等、西播地域の弁護士有志で組織されているはりま弁護士9条の会と憲法を守るはりま集会実行委員会の共催で、日弁連憲法委員会幹事等を務められ、2014年3月、大江健三郎氏、落合恵子さんらが発起人となって設立された「戦争をさせない100人委員会」の事務局長でもある内田雅敏弁護士(東京弁護士会)をお招きしての講演会を開催しました。
内田先生に兵庫県弁護士会姫路支部会館で講演していただくのは、今回で2回目です。
2006年2月6日発行の兵庫県弁護士会姫路支部報を本棚から取り出し、開いてみると、私の投稿した「『はりま弁護士九条の会』結成!!」という記事が掲載されています。
これを読みなおすと、内田先生に講演していただいたのは2005年の9月10日で、「風にそよぐ葦と課す日本国憲法-集団的自衛権行使の容認・明文改憲・そのための国民投票」との演題で、「憲法改正ありきで議論が進んでいるが、9条は堅持すべき」、状況は危機的だが、「望みなきにあらず」ということを熱心に語っていただいたということが書いてあります。
そうすると、今回、内田先生には実に19年振りに再び姫路支部会館で講演をしていただいたことになるわけですが、今回の講演では、「今、琉球列島の人々の『平和の願い』に思いを馳せる╱辺野古からの報告~辺野古から憲法を考える」との演題で、太平洋戦争下における住民を巻き込んだ沖縄戦は、軍隊は戦争を守らないという教訓を残したこと、住民を巻き込んだ旧日本軍の沖縄での地上戦、敗戦後、サンフランシスコ講和条約での沖縄の切捨て、戦後、国土の0.6%の面積しか持たない沖縄に在日米軍基地の70%を押し付ける現状等に鑑みれば、沖縄が憲法番外地として、一貫して捨て石とされてきたことを強調され、沖縄県民と共闘していく必要を訴えられました。
今年で80歳になられるというのに、現在でも頻繁に辺野古を訪れて新基地建設の抗議行動に参加しておられる内田先生のお話は豊富な知識だけでなく自らの体験にも基づく非常に説得的なものでした。
台湾有事が万が一にも現実のものとなれば、沖縄や南西諸島が再び捨て石とされることは必至ですが、戦争が起きれば、三沢、横田、横須賀、岩国、佐世保などの基地がある全国の各地域も例外ではなくなります。基地が真っ先に攻撃されるのは戦争の常識であり、ミサイルの標的となるのは沖縄だけではありません。
私たちは台湾有事を現実のものとしないことが、沖縄、南西諸島だけでなく国そのものが戦争に巻き込まれないようにするためにも不可欠であることを強く自覚する必要があります。
内田先生は、講演で、2014年11月1日沖縄市長選での応援演説で菅原文太氏が述べた、「政治の役割は二つあります。一つは国民を飢えさせないこと。安全な食べ物を食べさせること。もう一つは、これは最も大事です。絶対に戦争をしないこと」という言葉を引用されましたが、絶対に戦争をしないためには、憲法9条を堅持する必要があることはいうまでもありません。
安倍政権下で集団的自衛権の行使を認める戦争法が制定され、岸田政権下でも専守防衛の立場を投げ捨てる敵基地攻撃能力の保有を認める安保関連3文書が閣議決定されるなど、憲法9条がかなり痛めつけられていることは否定できないところではありますが、国会で改憲派が憲法改正発議に必要な3分の2以上を占める情勢が長く続くなかでも、全国津々浦々に結成された9条の会の草の根の力と野党共闘を後押ししてきた市民の力によって明文改憲の実現を阻止してきました。
高齢化の問題等で、多くの9条の会の活動が停滞気味であることも否定できないのですが、ここが踏ん張りどころです。「望みなきにしもあらず」との思いを持ち続ければ、改憲の策動は必ず阻止することができる筈です。
そのために、9条の会の活動を停止させることはできないことはいうまでもなく、今回の内田先生の講演を、はりま地域の9条の会の再生、コロナ禍のもとで参加者の寂しい集会が続いている憲法を守るはりま集会の活性化の契機としなければならない、私自身ももうひと踏ん張りしなければならない、そんな思いを強くしました。
PS 当日は弁護士、市民の方々等、予想を上回る50名近くの参加がありました。参加頂いた方々、どうもありがとうございました(モノクロ写真は2017年9月10日のはりま弁護士9条の会結成総会を報じる新聞記事と挨拶する呼びかけ人代表の赤松範夫弁護士)。