吉田竜一弁護士ブログ

衆議院選挙-自民党の圧勝は9条改憲の白紙委任ではない!

衆議院選挙、自民党の圧勝に終ったようです。

その事の評価、特にメディアの選挙報道のあり方については、また機会があれば述べたいと思いますが、憲法上、憲法改正の発議は各議員の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、発議することになっています(96条)。

2014年以降、衆参両院とも改憲派が3分の2以上を占めるという状況が長く続いており、いつ憲法改正の発議がなされてもおかしくない状況にあったのですが、2024年10月に実施された衆議院選挙では、改憲派は3分の2の議席である310を大きく下回る287議席しか確保することができず、国会が憲法改正の発議を行うことは不可能な状態になっていました。

しかし、昨年7月の参議院選挙では自民党、維新の会では改憲発議に必要な3分の2の議席は確保できていないものの、明確な護憲派の議席も3分の1に少し足りず、今回の衆議院選挙で改憲派の議席が3分の2の議席を大きく上回ったことで、参議院の無派閥の動き次第では国会が憲法改正の発議をすることが可能な状況となったということができます。

現に、高市首相は、選挙期間の終盤になって、与党圧勝の予測が出る中、2月2日の新潟県上越市での演説で、突如、「憲法もやらせてください」ということを訴え始めました。

しかし、「高市早苗が内閣総理大臣でよいのか国民の皆様に決めていただく」という、憲法的には成り立たないわけのわからない理由で行われた今回の衆議院の解散、争点となっていたのは消費税をどうするのか、与党の訴える「責任ある積極財政」を受け容れることができるのかということで、自民党の公約に一応掲げられていたとはいえ、憲法改正が争点になっていなかったことは誰の目にも明らかでしょう。

したがって、今回の自民党の大勝、自民党に一票を投じた人たち、そして選挙に行かなかった人たちが、9条改憲を白紙委任したものでないことは明らかです。

毎日新聞がSNS分析ツール「メルトウォーター」で分析すると、高市首相が「憲法改正をやらせてください」という事を突然に言いだした2月2日から、SNS上、「憲法」「改憲」を含む投稿数が急増しているが、投稿内容が「否定的」と判定されたのは26.2%、「肯定的」の4.3%を大きく上回っていること、否定的な投稿には、憲法改正で基本的人権が制限されることへの不安や徴兵制につながりかねないといった指摘があったことが報じられています。

国民は、日本がアメリカいいなり、トランプいいなりの大軍拡を行い、戦争国家に変貌することなど認めていないのです。

それでも憲法改正をやりたいというのであれば、高市首相、まずは、裏金・統一協会議員を復権させたこと、旧統一協会の有効弾劾「世界平和連合」の奈良県連合会郡山支部副支部長宛に挨拶状を送っていた疑惑について、沈黙するのではなく、自らの口で真摯に説明した上で、憲法改正の必要性を正面から国民に訴え、次の参議院選挙、あるいは衆議院選挙の争点に「憲法改正国民投票の実施」を据え、その是非を国民に正面から問うべきです。

どさくさに紛れて獲得した数の力に任せ、国民を置き去りにして憲法改正に突っ走ることなど絶対に許されません。

そして、国民の側も、憲法改正に反対するのであれば、もう一度腰を据えた草の根を結集しなければなりません。

作家の平野啓一郎氏は、1月18日、Xで「中道といっても、よく言って中道右派であり、左派の受け皿が必要。リベラルへの失望の先に反動しかないと思い込まず、また保守がうまくいってないのに保守しかないと考えず、長期的且つ根本的にこの国の未来を考えなければならない。ニューヨークのマムダニ市長の誕生など、もちろん、成果はこれからだが、新しい動きもある」と呟いておられましたが、全く同感です。

今回の中道改革連合の惨敗、「安保法制の違憲」も「原発廃止」「辺野古新基地建設反対」も棚上げにした旧立憲民主党の姿勢が護憲派にも受け容れられなったためであることは明らかです。

野党共闘がどうなるのか見通せず、護憲派にとっても厳しい情勢だとは思いますが、2014年以降、改憲派が改憲発議に必要な3分の2の議席を国会で確保していた10年間、私たちは憲法改正の発議をさせてこなかったのであり、そのことに確信をもって、憲法の受け皿を早急に構築し、「壊憲」の策動に立ち向かわなければなりません。

一言付け加えておくと、今回の選挙に対するメディアの姿勢についてもどこかで一言言わなければと思っているのですが、それはともかく、今回の選挙期間中、高市首相のPR動画の再生回数が1億回を超えたようで、自民党、政党交付金から何十億円も注ぎ込んだという話があり、この現象について、中央大の中北浩爾教授(政治学)は「SNSは政治や選挙を相当ゆがめており、看過できない。ルールの適正化について議論すべき時だ」と指摘しているようですが、この指摘ももっともです。

選挙だけでなく、憲法改正の国民投票についても、本当に適正な宣伝規制(CM規制)をしておかないと、改憲がカネで買われるという事態を防ぐことはできません。 

 

 

 

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