参政党の神谷代表の参議院選挙公示後の第一声は「高齢の女性は子供が産めない」というものでした。
これが「差別」だと批判されると、神谷代表は「生物学的に本当のことを言っただけで、差別ではない」と弁解しています。
しかし、村本大輔さんも述べておられることですが、問題は、何故、「高齢の女性は子供が産めない」などということを最初に言わなければならなかったのかということでしょう。
少子化対策が必要だというなら、そのことを訴えればいい話であり、わざわざ「高齢の女性は子供が産めない」などという必要は全くなかったはずです。
神谷代表は、演説で、「今まで間違えたんですよ。男女共同参画とか。もちろん女性の社会進出はいいことだ」と、女性の社会的進出を認めるような発言をしながらも、男女共同参画社会の進展を否定しています。神谷代表が男女共同参画社会の進展、女性の社会進出を否定していることは、続けて、「若い女性に子どもを産みたいとか、子どもを産んだ方が安心して暮らせる社会状況を作らないといけないのに、『働け働け』とやり過ぎてしまった」と述べていることからも明らかです。
要するに、参政党が推進しようとしている社会は、女性は仕事などせず、家に入って、子どもを産み、子どもを育てるのに専念すべきだという、戦前の家族観を前提にした社会に他なりません。
しかし、結婚するのか、子どもを持つのか、仕事を優先するのかということは本人が決めることであって、関係のない第三者、ましてや政治が口をはさむべきことではありません。政治がすべきは、子どもを持ちたいと考えている人たちには、安心して子育てできるような環境を整備するということに尽きるはずです。
やはり参政党の女性観の基底には「差別」があると言わざるを得ません。
参政党がスローガンとしている「日本人ファースト」についても、これが「排外主義」との批判を受けるようになると、「日本人を第一に考えるのは当然」と弁解しているようです。
しかし、外国人人権法連絡会の師岡康子弁護士が、アメリカで、「アメリカ・ファースト」のスローガンのもと、移民に対し暴力的な排斥が行われている現状を指摘した上で、「日本人ファースト」について、「外国人というだけでファーストではない、ないがしろにしていいというメッセージを含んでおり、排外主義につながる」と指摘してされておられますが、そのとおりだと思います。
「日本人ファースト」は、「外国人が優遇されているのはおかしい」という文脈で訴えられているのですが、外国人の犯罪率が高く治安悪化の原因となっている、外国人にだけ返済不要な奨学金がある等々は全て虚偽です。外国人に生活保護をするのはおかしいとの声もあるようですが、外国人の方で生活保護を受けられる「対象となるのは適法に日本に滞在し、活動に制限を受けない『永住者』、『定住者』等の在留資格を有する外国人」で、日本人と同じような要件のもとで受給が認められているに過ぎません。
「日本人ファースト」の最大の問題点は、貧富の格差が拡大し、多くの人たちが生活に苦しんでいる現状について、その原因を作っている政権を批判するのではなく、「私たちの生活が苦しいのは外国人のせい」と、外国人を攻撃対象としていることです。それは自民党政治の問題点を覆い隠してしまうという機能を持つもので、現実の政治課題を解決する力にはまったくなりません、
また、「外国人」への攻撃として現れている「日本時ファーストが、いずれその矛先が国民に向かい、生活保護受給者、障害を持っている方など社会的弱者と呼ばれている人がつぎなる標的にされることは、例えば、反ユダヤ主義を掲げていたナチスが、ユダヤ人だけでなく、障害者や同性愛者にも矛先を向け、20万人もの障害者、同性愛者を安楽死させてきたように、歴史が示すところです。
社会に分断と排除を持ち込むような政策は絶対に認めることができません。
最後に、参政党の憲法草案(ネットで見ることができます)について、一言しておきます。
東京都立大学の木村草太教授(憲法学)は、この憲法草案を、「左派も右派も、護憲も改憲派もない」「怪文書の類」と評されているようですが、的を射た批判であり、とにかく憲法案などと呼ぶこともはばかられるひどいものです。
主権は国家に認められ、国民主権という言葉はありません。表現の自由党の権利も保障されていません。
国民の要件は、父又は母を日本人とであり、日本語を母国語とし、日本を大切にする心を有する心を基準にして法律で定めることとされ、国民には国を守る義務が課されます。
これでは、日本国民は政治権力が認定することになり、権力に反対する人間、国を守る気概のない人間、戦争反対を唱える人間はすべて日本国民ではないこと、すなわち非国民とされてしまうことは明らかです。
こんなものを作ったのが、弁護士らしいということを聞いて、本当にあいた口が塞がらないのですが、日本をこんな国にしようという政党は厳しく批判されなければならないと思います。