吉田竜一弁護士ブログ

グローバル・ジェンダー・ギャップ指数~日本は110位(G7で最低)

9月8日、神戸市内で行われた第38回はたらく女性の兵庫県集会で、「誰もが人間らしく働ける社会をめざして」という演題でお話をさせてもらいました。

総務省が2019年7月30日に発表した労働力調査の結果によると、男性の就業者数は3744万人なのに対し、女性の就業者数は3003万人と初めて3000万人を突破し、就業者数の男女差は縮まる傾向を示しています。

女性の就業率を年代別にグラフにしてみると、従来は出産や育児のために仕事を辞め、育児が一段落してから再び働き出す女性が多いため、30代がへこむM字型になっており、これがこれまで日本で女性の労働参加が進んでいない象徴とされていましたが、最近では、日本でも30代の労働率が大きく上昇し、欧州のような台形に近づいてきた傾向を見て取ることができるようになります。

そのこと自体は好ましいと言えなくもないのですが、重要なのは働く女性の労働実態です。

管理職に就いている女性の割合は2018年で14.9%、上場企業の役員になっている女性は4.1%しかありません。

世界の平均は27%で、日本における女性の管理職の割合は、欧米や東南アジアにも遠く及ばない実態となっています。

そして、昇格昇進が困難という状況以上に問題なのは、根本的に賃金が低いということです。厚労省の女性の平均賃金は、2019年5月の厚労省の勤労統計調査では月額約19万円、男性の6割以下の水準しかありません。

その原因は、男女間に賃金格差があるというだけでなく、女性の非正規率が著しく高いことにあります。自営業主や会社役員を除いた雇用者に占める非正規率は、2019年6月の数字で、男性が約23%(703万人)なのに対し、女性は約55%(1445万人)です。男性は4人に1人が非正規ということになりますが、女性の場合、2人に1人以上が非正規として働いており、これが働く女性の賃金が低い大きな原因となっているのです。

安倍首相は、ことあるごとに「この6年間で雇用は380万人増えた」ということを口にしますが、雇用が増えたといっても、年金が貧しいので働からざるを得ない高齢者と、いつクビを切られるからわからない状況で低賃金が非正規が増えただけの話で、さらに女性の多くは非正規の地位に甘んじざるを得ないのです。

2014年4月27日の朝日新聞は、女性の3人に1人、65歳以上の単身女性の2人に1人が貧困状態にあるとの記事を掲載していましが、そうした実態は今も改善されていないということになります。

世界経済フォーラム(WEF)による男女格差の度合いを示す「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」2018年版が昨年12月18日に発表されていますが、調査対象となった149カ国のうち、日本は110位(スコア0・662)でした。

グローバル・ジェンダー・ギャップ指数は、経済・教育・保健・政治の4分野14項目のデータを元にして、各国の男女の格差を分析した指数。各分野での国の発展レベルではなく、純粋に男女の差だけを評価しているものですが、わが国の場合、教育、保健はそこそこの数値を示しているものの、経済、政治が順位でともに100位以下のため、上述したとおり総合で110位、G7で最低です。

政治の場では、クォーター制がまったく進まず、女性の国会議員比率は193か国中165位という悲惨な数字を示していますが、経済の分野でも、女性は男性と賃金格差があるというにとどまらず、2人に1人以上の女性労働者が低賃金、不安定雇用の非正規に追いやられているため二重三重の差別を受けているという状況です。

こんな状態、直ぐにでも解消されなければなりませんが、政権の内部から、「子どもを産まないのが問題」、「セクハラ罪という罪はない」など、公然と女性を差別し、セクハラ加害者を擁護する発言が繰り返され、「生産性がない」などとLGBTの人たちへのひどい差別発言を行った議員に対する処分もなく、選択的夫婦別姓は、「経済成長と関係がない」「家族の絆が壊れる」と否定される。

こんな政権のもとでは、働く場での女性差別や賃金格差が解消される筈がありません。

ジェンダー平等を前に進める政治に変えるためには、差別と分断を持ち込む政権には退場してもらうほかありません。

担当している事件の中心は労働事件とはいえ,女性の側の視点で労働問題を深く考えていなかった私自身,いろいろと考える機会を与えて持った今回の集会でした。 

尚、講演の準備をしていて、「厚生労働省が省内の全部局に、根本匠厚労相の指示として『非正規』や『非正規労働者』という表現を国会答弁などで使わないよう求める趣旨の文書やメールを通知し、本紙が情報公開請求した後に撤回したことが分かった」と報じる東京新聞の記事に接することができました。

「非正規」ではなく、「有期」「パート」「派遣」という用語を使えという指示だったようですが、「非正規」という言葉を使わないことによって、「有期」「パート」「派遣」といった形態の雇用がもつ、低賃金・不安定雇用である等の問題を覆い隠そうとするものであることは明らかです。

安倍首相は、ことあるごとに、「『非正規』という言葉を、この国から一掃してまいります」と宣言していますが、実態に手をつけることなく、こういう方法で「非正規を一掃する」という宣言を実現するという忖度もあったのかと思うと、あいた口が塞がりません。

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