吉田竜一弁護士ブログ

本当に困っている人たちに迅速かつ直接的、効果的な公的支援を!

4月30日に成立した補正予算に、GO TOキャンペーンなるコロナ収束後の消費喚起策が1.7兆円も盛り込まてていることに、「焼野原に花火」などと大きな怒りの声が拡がっています。
一方、感染爆発、医療崩壊を食い止めるための予算は僅か7000億円。野党が「優先順位」が違うと批判するのも、もっともなところでしょう。

政府の財政支援は、まず医療崩壊の阻止に向けられなければなりませんし、学生、フリーランスの人たち、労働者、自営業者の人たちをはじめ迅速な直接的、効果的財政支援を必要としている人たちは少なくありません。

学生団体「高等教育無償化プロジェクト」のアンケート調査の結果、新型コロナウイルスの影響で退学を検討している学生が20.3%に上ることが明らかになりました。
バイトできない、親も減収。コロナの影響で学生を取り巻く経済的な状況をより深刻化しています。

この国の未来を担う若者を守るための学生支援が急務です。
ところが補正予算案に盛り込まれた授業料減免費用はわずか7億円で、これでは1600人に1人の授業減免にしかなりません。
明治学院大学が学生支援を始めたのを皮切りに、早稲田大学、東北大学、名古屋大学等々、多くの大学が学生支援に乗り出していますが、大学任せにするのではなく、国の責任として、直ちに退学を検討せざるを得ないような学生たちを救うために、少なくとも学費の大部分を支援するための財政措置が取られなければなりません。

また、西田敏行氏が理事長を務める日本俳優連合が俳優・声優に行ったアンケート調査では、4月に入って新しい仕事の依頼がまったくない人が7割に上ることが明らかになりました。
コロナのために失業、休業した場合には給付金が受け取れることになっていますが、収入の減少を証明する必要があるところ、仕事をキャンセルされたことなどを証明することは極めて難しいというだけでなく、そもそも給付金の額も、それだけでは到底、いまの事態に対応できるようなものにはなっていません。

4月29日の衆議院予算委員会で、共産党の志位委員長は、ぴあ総研の調べでは、5月末までの推計で、中止・延期等をした公演・試合が15万3000本、入場できなくなった観客総数延べ1憶9000万人、入場料金の減少額が3300億円にもなっていることを示したうえで、大手も小さな劇団も、人によっては倒産・解散も覚悟しながら中止を決断し、多くの人々の移動を止めた、これは巨大な社会的貢献であり、この社会的貢献をねぎらうためにも、そして日本の文化・芸術・スポーツを守るためにも特別の補償があってしかるべきだと訴えました。
安倍首相は、コロナ収束後、「文化芸術にふれようというキャンペーンも行う」などと答弁したようですが、収束後では遅いのです。いま、直接的、抜本的支援がなされなければなりません。

どうも、いまの政府は、厳しい批判にさらされて実現できなかったお肉券、お魚券の発想にしろ、今回のGOTOキャンペーンにしろ、本当に困っている人たちを直接支援するのではなく、本当に困っている人たちには僅かばかりの恩恵に預かれるような施策しか実行する気がないように思えてなりません。

その発想に、アベノミクスの根底にある“トリクル・ダウン・セオリー”、すなわち、強い者が潤えば、その雫が弱い者の方にもこぼれて、弱い者も少し潤うという考えに相通ずるものがあると思うのは私だけでしょうか。

下の者がおこぼれに預かるという、トリクル・ダウン・セオリーというネーミング自体、私は大嫌いですが、トリクル・ダウン・セオリーが誤っていること、強い者が潤ったところで、弱い者が潤うことにならないことは、いくら大企業を支援しても、大企業は内部留保をため込むだけで、労働者の実質賃金がほとんど上がってこなかったことを見ても明らかです。

日は73回目の憲法記念日。

朝日新聞は、憲法記念日を前に実施した全国世論調査の結果、憲法改正の議論を急ぐ必要があるかを尋ねたところ、「急ぐ必要はない」との回答が72%だった旨を報じています。

多くの人は憲法改正など望んでいません。

いま、求められているのは、憲法を活かした政治を実現し、ひとりひとりの命を守っていくことです。

未曽有のコロナ禍を前に政権はやるべきこと、やらなければならないことに誠心誠意取り組むべきです。

財産権(29条)、営業の自由(22条)を保障する憲法のもとで、自粛、休業を要請するのであれば、補償と一体のものでなければならないことは、以前のブログにも書きましたが、
個人の尊厳(13条)に最大の価値を置き、生存権(25条)を保障する憲法のもとで、真っ先に救済されなければならないのは、本当に学生、フリーランス、そして自営業者の人たちです。

今般のコロナ禍を災害とみなして災害法制の適用を訴えている日本弁護士連合会・災害復興支援委員会委員長の津久井進弁護士は、「緊急事態宣言を出して、あとは人任せで、犬をなでたりする時間があるなら、ちゃんと『公的措置』をドシドシ出して、対応してください。憲法や人権のせいにしないでください。人間を軽視すれば、経済は必ず退廃します」とTwitterでつぶやいていますが、まったく同感。

本日の改憲派の集会で、安倍首相は「憲法に緊急事態条項を」とのビデオメッセージを送るようですが、特措法のもとでは知事に強い権限が与えられ何とか持っている状況なのに、総理大臣に全権を与えたらどのようになっていたのか、考えただけでゾッとしてしまいます。自分の無策を棚に上げ、コロナに便乗した改憲論など論外だと言わなければなりません。

アイキャッチ画像は2012年9月に岩手・陸前高田のボランティアセンターで撮影したものです。

 

 

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