吉田竜一弁護士ブログ

新しい戦前はごめんだ!

昨年12月16日、岸田政権は、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力 整備計画」のいわゆる安保三文書の改定を閣議決定し、反撃能力(敵基地攻撃能力)を保有し活用していく方針を明記しましたが、その直後の12月28日に放映された徹子の部屋で、黒柳さんから「来年はどんな年になるでしょう」と尋ねられたタモリさんが「新しい戦前になるんじゃないでしょうか」と答えたことが大きな反響を呼びました。

その発言の真意は明らかではありませんが、多くの人が理解しているとおり、米国のいいなりに戦争に前のめりになっていることを危惧しての発言と理解するのが素直なように思いますし、その危惧は極めて的を射たものだと思います。

岸田首相は、国会でも、反撃能力について「専守防衛から逸脱するものではない」との答弁を繰り返しており、確かに三文書にも、「反撃能力とは、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合」に、「そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力をいう」ということが書いてあるのですが、問題なのは、安倍政権下で成立した戦争法のもとで集団的自衛権の行使が容認されている現行法上、日本だけではなく日本の同盟国(米国)に対する武力攻撃が発生した場合にも、反撃(敵基地攻撃)をすることが認められることなるというだけでなく、政府見解のもとでは、現実に相手国が武力攻撃を開始していなくとも、武力攻撃に着手した段階で、武力攻撃が発生したものとして、反撃(敵基地攻撃)をすることが可能となっていることです。

我が国に対する攻撃がなくとも、米国が攻撃されれば米国の相手国を攻撃すること、また、相手国が現に攻撃を行っていなくとも、攻撃に着手したと判断した時点で相手国を攻撃すること(そのような判断を正確に行うことは極めて困難です)が認められている点で、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有が、安倍政権以前の歴代政権が安全保障の根幹としてきた「専守防衛」を逸脱したものであることは明らかだと言わなければなりません。

反撃(敵基地攻撃)がひとたび行われれば、当然に相手国からの報復を招き、武力行使の応酬とならざるを得ないのであり、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有はまさに我が国が戦争を行う、米国の行う戦争に巻き込まれることになる危険は極めて高いものとなります。

岸田政権は、このような憲法違反の、専守防衛とも両立しない反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を認める閣議決定を速やかに撤回すべきです。

先日、ノーベル賞作家で、九条の会の呼びかけ人でもあった大江健三郎氏がお亡くなりになられましたが、大江健三郎氏は、ノーベル賞受賞の講演で、「不戦の誓いを日本国の憲法から取り外せば・・・なによりもまずわれわれは、アジアと広島、長崎の犠牲者たちを裏切ることになるのです」と述べておられました。

広島の原爆死没者慰霊碑には、「安らかに眠って下さい。過ちは繰返しませぬから」という言葉が刻まれています。

過ちを繰り返すことは絶対に許されません。

私たちがすべきことは、九条の会の呼びかけ人であった故・加藤周一氏が述べていたように、戦争の準備ではなく、平和の準備でなければなりません。

2023年が新しい戦前になるのは真っ平ごめんです。

事務所のホームページにも掲載していますが、今年のはりま憲法を守る集会は、「新しい戦前はごめんだ! 憲法9条で平和の道を!」のスローガンのもと5月6日午後1時30分から姫路市市民会館大ホールで開催します。

特に、このブログを読んで、「そんなこと言ったって、中国あるいは北朝鮮が攻めてきたらどうするのか」と思っている人、時間があれば、是非、ご参加ください。集会のメインである伊藤千尋さんの講演で、きっとその答えが見つかるはずです。

 

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