19日、神戸三宮で兵庫県弁護士9条の会の総会があり、引き続き軍事評論家でもある小泉悠東京大学先端科学技術センター准教授をお招きして開かれた記念シンポジウム「ウクライナ戦争と私たちの未来」に参加してきました。
一般の人たちにも公開して行われるシンポには200名以上の参加があり、近年にない盛況。
9条の会が講演依頼をした際、「9条の会とは少し考え方が違うが、議論することが大事」と講演を快諾してくだった小泉悠先生。
確かに9条の会とは結構考え方は違うのかもしれませんが、それでも戦争は回避すべきだとの立場から安全保障のことを真剣に考えておられることがよく伝わってくる、お話でした。
ウクライナが極めて厳しい情勢に追い込まれている中で、何も支援しなくてよいのかという指摘やロシアが大量の核兵器を保有しているが故にNATOから攻め込まれないですんでいる等々、本当に考えさせられるお話がいくつもありました。
9条の会としても、単に憲法9条を錦の御旗にするだけではなく、どうすれば具体的に戦争を回避できるのかを考えなければなりません。
私自身は、核抑止論ではやはり際限のない軍拡競争が繰り広げられるだけで、いつまでも戦争を回避し続けることには限界があると思っており、小泉先生も、日本が核を保有することには賛成しないという立場でしたが、核抑止論の問題点については、もう少し考えをまとめてから機会があればブログに書きたいと思います。
(懇親会場で小泉悠先生-中央)
尚、小泉先生は、核抑止論の立場に立つ人が核廃絶論者をお花畑と揶揄し、核廃絶論の立場に立つ人が核抑止を訴える人をネトウヨと非難することの不毛性を指摘した上で、立場を異にしてもきちんと議論することの重要性を訴えられておられましたが、この点については本当にそのとおりだと思いました。
一夜明け、小泉先生のお話を聞いたからというわけではないのですが、今日行かなければ観る機会はないと思い、午前中に映画オッペンハイマーを観てきました。
3時間10分の長い映画でしたが、途中、あきることもなく観ることができました。
原爆の開発着手から広島、長崎への投下の過程まで、原爆投下が戦争を終わらせることができたという従来のアメリカの言い分が前面に出ていたことについてはウーンと思わざるを得ないところもありましたが、広島、長崎への惨状に苦悩し、水爆開発に反対するオッペンハイマーの姿を描いている点については、従来のアメリカ映画にはない視点があったと思います。
しかし、だからこそ、多くの人が指摘しているとおり、広島、長崎の惨状に触れていない点については残念と評するほかありません。
惨状を映画で表現することは相当に難しかったのだと思いますが、やはり原爆を開発した人間の苦悩を描くなら、この点は避けてはならない描写だったのではないでしょうか。
まあ、それでも観る価値はある映画だとは思います。
それにしても、赤狩りについては、ロバート・デ・ニーロ主演の映画「真実の瞬間」でも描かれていましたが、アメリカの恥ずべき汚点であったことを改めて認識しないではいられません。
(キャッチアイ画像は原爆資料館に展示されている原爆が投下された直後のキノコ雲の写真とエノラゲイにリトルボーイを積み込んでいる写真)