吉田竜一弁護士ブログ

兵庫県弁護士9条の会の総会に出席

4月19日、神戸で兵庫県弁護士9条の会の第20回定期総会があり、出席してきました。

総会では、昨年のはりま憲法を守る集会で講演してくださった防衛ジャーナリストの半田滋さんが、「ずっと戦後であり続けるために!」とのタイトルで講演して参加者とディスカッションしてくださり、その後、議案書の討議を行ったのですが、議案書には、昨年4月の総会で、「9条の会とは少し考え方が違うが、議論することが大事」と講演を快諾してくださり、「ウクライナ戦争と私たちの未来」とのタイトルでお話してくださった小泉悠東京大学准教授が昨年9月の毎日新聞で「民主的な価値を守る軍隊に」と題する論点でされた発言が、つぎのとおり、引用されていました。

「あの戦争」は明確な侵略戦争でした。容易には許されないから日本は周辺諸国に信頼されねばならない。軍事に関心の高い層には、こう聞くだけで怒る人もいますが、やはり大前提です。他方、「軍隊は問題を解決するものではなく問題そのもの」といった意見にも同意できません。私は、日本国憲法が大好きです。特に13条の幸福追求権。誰にも干渉されず好きに生きたい人間にとって本当に大切です。ただ主権国家である以上は、軍事力を憲法で位置づけるべきです。9条2項の「戦力の不保持」は現実と合致しておらず、変えるべきでしよう。 護憲論者には、9条を丸ごと残して、日本を軍事へ傾斜させすぎない歯止めにしたい人も多い。私との違いがこの点だけならば、「では、どの程度の軍事力で具体的に何を守るならばよいのか」 と政策論から議論を始められるはず。

総会議案書では、「きわめて衝撃的」な発言と書かれていたのですが、「衝撃的」であるとともに「きわめて重要」な問題提起だと思います。

改憲論者の中に、このように深く真面目に考えておられる方がいることがわかったことも重要なことで(このことは昨年4月の総会で既にわかっていましたが)、護憲論を「お花畑」、改憲論を「ネトウヨ」と揶揄するのではなく、小泉准教授の指摘するとおり、お互いにきちんと議論することが大切なのだと改めて思いました。

しかし、それでも私はやはり9条は変えるべきではないと思います。

懇親会で、半田さんが、「9条には二度と加害者にならないという側面もある」ということを指摘してくれたのですが、1995年8月15日に発表された「戦後50周年の終戦記念日にあたって」(いわゆる村山談話)が、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支払いと侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」と述べているとおり、第二次世界大戦では、沖縄の人たちを始め少なからぬ日本国民が甚大な被害を被ったわけですが、それだけではなく、わが国は加害者としてアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えてきました。

だから、憲法は、前文で「政府の行為によってふたたび戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」し、9条で徹底した「戦争放棄」を定め、二度と戦争の加害者にならない旨を宣言したと考えられるのであり、再びわが国が戦争を行うことに道を開くことになりかねない9条改憲(9条2項削除)には軽々に賛成することができません。

殊に、安倍政権下での「安全保障法」の制定、岸田政権下での「敵基地攻撃能力の保有」によって、それでなくとも9条は傷つけられているのですが、集団的自衛権の行使を認める安全保障法が米国と一緒に軍事行動を行う道を開き、敵基地攻撃能力も台湾有事において米国のために中国を叩くことを念頭に置いていることは明らかです。

小泉悠准教授の「どの程度の軍事力で具体的に何を守るならばよいのか」 という問題提起に答えるならば、少なくとも、米国と一体になって米国の利益になるような軍事力は保有すべきではないのではないでしょうか。半田さんが、講演で、「台湾有事の戦場は、日本と台湾であり、米国や中国ではない。『敵基地攻撃能力』を持ち、対米支援するのは自滅を選ぶのに等しい」と述べられていたとおり、現状で9条を変えて軍事力を保有することになれば、日本が、わが国の存立を守るためではなく、米国の利益を守るために、米国と一緒に再び戦争の加害国となってしまうことになるだけだと思います。

では、自主防衛のための軍事力ならよいのか。

やっぱりダメだと思いますが、その論理はまだうまく説明できません。

半田さんは、講演の最後を、「平和は軍事力ではなく、命がけの外交によってはじめて実現する」という言葉で締めくくってくれましたが、私もそのとおりだと思います。

神戸ハーバーランド~懇親会後に撮影

 

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