コロナ禍が収束する気配を見せるどころか、首都圏を中心に感染爆発が起きていると見ざるを得ない状況のなかで、4回目の緊急事態宣言が発令される状況となっています。
入院できずに自宅療養を余儀なくされる人が増え、医療は危機的な状況にあるだけでなく、緊急事態宣言の延長が事業者や生活困窮者の人たちに一層深刻な影響をもたらすことは明らかであり、医療崩壊を防ぐために、そして、深刻な状況にある生活困窮者の人たちに対する必要な補正予算の編成や法改正を行うために、臨時国会を開催し、国権の最高機関である国会(憲法41条)で必要な議論を速やかに行う必要性があることは明らかです。
そうした観点から、7月16日、立憲民主党、日本共産党、国民民主党、社民党は憲法53条の規定に基づき、臨時国会の開催を求めているのですが、菅政権は臨時国会を召集しようとしません。
東京新聞の8月12日の社説が、「与党が国会召集に応じないのは、全国的な感染者急増について政府の責任を野党から追及されれば、秋までにある衆院選を前にダメージになるとの判断があるためとみられる」と述べているとおり、臨時国会の開催に応じて、コロナ対応についての責任を問われれば、下がり続けている内閣支持率が更に下がることが避けられないということなのでしょう。
しかし、憲法53条は、臨時国会の開催要求があった場合、内閣はいつまでに臨時国会を開催しなければならないのかは明記していないものの、内閣には速やかに開催する義務があるというのが憲法上の通説であり、自らの保身のために臨時国会の召集を拒否する菅政権の態度は明らかに憲法を蹂躙するものです。
特に、自民党は2012年に発表した憲法改正草案においては、総議員の4分の1以上から要求があったときには20日以内に臨時国会を開催しなければならないとしており、ホームページに掲載しているQ&Aでは、「党内議論の中では、『少数会派の乱用が心配ではないか』との意見もありましたが、『臨時国会の召集要求権を少数者の権利として定めた以上、きちんと召集されるのは当然である』という意見が、大勢でした」と書いており、今回のやり方は、自ら発表した憲法改正草案さえ無視していることになります。
こんな政党が行おうとする憲法改正など、絶対に認めることはできません。
かさねて言いますが、自民党は9月26日に総裁選を行うことを決めたようですが、いま政権与党が行わなければならないことは、総裁選などではなく、臨時国会の開催です。
ところで、自民党の総裁選自体は、自民党が行うことであり、それ自体にはほとんど興味のないことだったのですが、総裁選に立候補を決めた高市早苗衆議院議員が、安倍政権時代に、堂々と、「さもしい顔して貰える物は貰おう。弱者のフリして得しよう。そんな国民ばかりじゃ国は滅びる」「人様に迷惑かけない社会へ」「もう一度、皆さんと力を合わせて、また安倍総理に頑張っていただいて、日本を奴らから取り戻そう」とスピーチしていることを知って、とにかくびっくりしました。
この発言の根底にあるのは、菅総理が前の総裁選で強調していた「自助」だけ。
生活保護を利用するような人は、「人様に迷惑をかける奴ら」なのです。
ここには憲法25条、社会保障、生活保護に対する理解はかけらもありません。
しかし、コロナ禍という大災害のもとで、政府が本当に困っている人、弱っている人に手を差し伸べる施策を速やかに講じてくれないのであれば、頼れるものが憲法が保障する生活保護しかないことは明らかです。
厚生労働省が、ホームページに、「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください」と掲載したことの意味を、菅総理、高市早苗さんをはじめとする、「自助」を強調する議員たちは、一度、考えてみるべきでしょう。