吉田竜一弁護士ブログ

憲法違反の国旗損壊罪に断固反対! 

本年6月23日、自民党、維新の会、国民民主党、参政党が衆議院に共同提出した「国旗の損壊等の処罰に関する法律案」が6月30日に衆議院本会議で可決され、現在、参議院で審議中です。

しかし、自由法曹団は6月23日、「『国旗の損壊等の処罰に関する法律』の制定に反対し、同法律案の廃案を求める声明」を、兵庫県弁護士会も、7月8日、「国旗の損壊等に関する法律案に反対する会長声明」を発していますが、これらの声明が明らかにしているとおり、国旗損壊罪は、憲法19条、21条、31条に違反する違憲立法です。

まず、罪刑法定主義を定める憲法31条のもとで、刑罰法規は、何が処罰され、何が処罰されないのかを明確に区別できるものでなければなりません(明確性の原則)。ここが曖昧では、私たちは、どのような行動をとれば罰せられることになるのか、どこまでが大丈夫なのか判断できず、私たちの行動が過度に委縮してしまうことになりかねないからです。刑罰法規は私たち国民の行動に委縮効果を与えるようなものであってはならないのです。

ところが、法案では国旗損壊罪では、「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させる方法にょり」「公然と」「損壊し、除去し、又は汚損」する行為が処罰対象となっているのですが、例えば、国旗に落書きする行為は、ある人にとっては不快感を与えることになるでしょうし、ある人にとっては面白い表現だと受け止められる場合もあり、これでは明確性の原則が充足されているなどとは到底言えません。

「損壊し、除去し」との点についても、表現の自由を保障する憲法21条によって保護されるべき、表現上の加工行為(切り貼り、変形、着色、デザイン化)との境界も極めて不明瞭で、法案は、憲法の人権規定の中でも特に優越的地位に立つとされる憲法21条の表現の自由に対しても重大な脅威となります。

また、国旗損壊罪の保護法益は「国旗を大切に思う国民感情」とされているようですが、これ自体、極めてあいまいな概念であり、国旗は大切に思わなければならないという考えを一方的に押し付けるものと言わざるを得ません。「日の丸」については、戦争で大切な人を亡くした人たちの中には戦前の侵略戦争を行った軍国主義の象徴と考えている人もまだ少なくないはずですが、こうした人たちに国旗を大切に思えなどというのは、その人たちに対する思想良心の自由(憲法19条)の否定です。

国旗損壊罪の成立を求める人の中には、外国の国旗は刑法92条の外国国章損壊罪で守られているのに、日本の国旗が守られていないのはおかしいという人が少なくないようです。

しかし、刑法92条が守っているのは、この条文が「国交に関する罪」の章に規定されていることからも明らかなとおり、外国の国旗ではなく、日本の外交上の利益です、すなわち、外国の国旗を損壊することで、その国との外交問題に発展する可能性があるから処罰対象としているのですが、日本人が日の丸を損壊したからといって外交問題に発展する可能性などなく、刑法が外国の国旗だけを守っていることにはきちんとした理由があります。

アメリカ連邦最高裁は、1992年、国旗は国家の統一や愛国心の象徴として尊重されるべきであると述べながらも、一方で、国旗に対する向き合い方自体、それによって象徴される国家への意見表明でもあり、表現の自由・思想良心の自由は、民主主義社会の根幹をなすものであって、政府が特定の思想や意見を抑圧するために表現の自由を制限することはできないとして、国旗損壊行為を処罰することが許されないことを確認しています。

すなわち、表現の自由が重視されるアメリカでは国旗損壊行為は処罰されません。

一方、国旗損壊行為を厳しく処罰している代表は中国です。中国が国旗損壊行為を厳しく処罰しているのは、中国が全体主義国家であることと無関係ではありません。

国旗損壊罪を成立させることに高市首相が御執着であったことは公知の事実ですが、アメリカべったりで、中国に批判的な高市首相が、こういうところだけアメリカとは歩調を合わせず中国と歩調を同じくすること自体、私は矛盾だと思いますし、それでも国旗損壊罪の成立にこだわるというのであれば、それは日本を戦前の全体主義国家に回帰させたい狙いがあることを自認するに等しいとの批判を免れるものではありません。

現在の国会の力関係からすると成立する公算が大であることは否定できませんが、良識の府である参議院が頑張ってくれることをちょっぴり期待していますし、仮に成立したとしても、このような違憲立法に対しては法律家としても毅然とした対応をとっていかざるを得ません。

文中の写真は2015年に兵庫県弁護士会主催の戦争法反対集会に参加したとき、弁護士会のイメージキャラクター・ヒマリオンと撮影したもの(古い写真で恐縮です)。

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