吉田竜一弁護士ブログ

エンタメは空気のようなものであっても不要不急のものではない!

緊急事態宣言が出されてから外に飲みにいくこともできず、週末、そしてゴールデンウィークは専らレンタルショップや録画していた映画を観ながら、家飲みをしていました。

飲みながらなので、初めての映画を真剣に観るよう雰囲気ではなく、主にゴッドファーザーやダーティハリー、ダイハードなどのシリーズものを全作観なおしたりしていたのですが、初めて観た映画ももちろん何本かあります。

特によかったのは、4月10日に亡くなられた大林宣彦監督の2007年の「転校生」(長野版転校生)と、2019年に制作された韓国映画の「無垢なる証人」です(この二本は途中からかなり真剣に観ました)。

小林聡美さんと尾美としのりさんの主演で1982年に製作された「転校生」(尾道版転校生)は個人的に邦画では5本の指に入る大好きな映画ですが、大林監督が舞台を長野に移してリメイク映画を撮っていることは知りませんでした。同じ監督の同一作品のリメイクということで、市川崑監督の「犬神家の一族」が思い浮かび、当然、全く同じストーリーなのだろうと何の情報も持たずに観たところ、男の子と女の子が入れ替わるというベースは維持されていたものの、途中から尾道ストーリーとは違う展開となり、とにかくびっくり。

だけど、よかった。

人は誰も、― 生きてその物語を残す。
人の命にはかぎりがあるが、物語の命は永遠だろう。
未来の子供たちよ、―  今も元気で暮らしていますか?……

最後のテロップには、大林監督が映画で訴えたかったことが凝縮されているのだと思いますが、ほんと、いろいろ考えさせられる映画でした。

広島出身の大林監督は映画人9条の会の呼びかけ人でもありました。

合掌。

「無垢なる証人」は、「転校生」とは全く異なる法廷サスペンスでしたが、これも別の意味でいろいろ考えさせられました。

韓国映画の法廷ものといえば、アカデミー作品賞を受賞したパラサイトでも主演していたソン・ガンホさんの「弁護人」。これは既に5回は観ている、殊に法曹を目指す人には必見の映画ですが、「無垢なる証人」は、「弁護人」とは違う視点の映画だったものの、よくできた映画だと感心しました。先日観た韓国映画の法廷ものである「8番目の男」もなかなかでしたが、私的にはやっぱり「無垢なる証人」の方が面白かったです。あくまで個人的感想になりますが、ポール・ニューマンの「評決」、ジーン・ハックマンの「訴訟」と匹敵するレベルです。

日本にも周防正行監督の「それでも僕はやっていない」や、是枝裕和監督の「三度目の殺人」といった優れた法廷ものがありますが(お二人とも映画人9条の会の賛同者です)、最近の映画界全体を見渡すと、韓国の方が元気があるなあと思うのは私だけでしょうか。

さて、ぴあ総研の調べでは、5月末までの推計で、コロナのために中止・延期等をした公演・試合が15万3000本、入場できなくなった観客総数延べ1憶9000万人、入場料金の減少額が3300億円にもなっているおり、ライブ、エンタメが重大な危機にさらされていること、にもかかわらず補償がほとんどないことは前回のブログでも書きました。

5月2日の東京新聞では、ホリ・プロの堀義貴社長が、インタビューに答えて、「ドイツや米国では、外国人アーティストでも早い段階でまとまった金額が国から入金されたと聞いている。エンタメが国の財産だと思っているから手厚いのだろう」と述べた上で、日本について「『クールジャパン』というが、これでは『冷たい日本』だ。海外で稼いでくれと言うのに、死にかかっている時は手を差し伸べない」と批判した上で、エンタメは「不要不急」で「生きるために必要ではない」と分類されがちな風潮について、「米国の作家スティーブン・キングもツイッターで『もしアーティストが不要だと思うなら、隔離中(自宅にいる間)、音楽、本、詩、映画、絵画なしで過ごしなさい』というメッセージを出した。ただ食べて寝るだけで、本当に幸せだろうか」と疑問を投げ掛けておられますが、本当にそのとおりだと思います。

スティーブン・キング(アイキャッチ画像は堀氏が引用した同氏のツイッターです)。

肩書はホラー小説家と書かれることが多く、ホラー小説、ホラー映画は得意ではありませんが、同氏の作品にはホラー小説以外にも優れたものがたくさんあります。原作が映画化された「ショーシャンクの空に」(原作「刑務所のリタ・ヘイワース」)や「スタンド・バイ・ミー」(原作「THE BODY」)は大好きです(特に「ショーシャンクの空に」は竹嶋弁護士が一番好きな映画でした)。

多くの裁判が停止するなかでも刑事事件、少年事件はずっと動いていますが、国選で少年事件を担当することになり、この間、神戸市内にある鑑別所に通わなければならず、コロナの影響でずっと車で往復していました。

車中で映画を観ることもできず、往復の車中でずっと聴いていたのは、相変わらずレッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、ビートルズ、浜田省吾等々。

詩や絵画のことはよくわからないけど、音楽、本、映画のない生活など考えられません。

エンタメは空気のようなものではあっても、不要不急のものでは絶対にありません。

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