吉田竜一弁護士ブログ

検察庁法改正に断固反対!

「#検察庁法改正案の強行採決に反対します」がTwitterトレンド1位になっているようです。

日本弁護士連合会は、4月6日、政府が3月13日に国会に提出した検察庁法改正法案を含む国公法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明を発表していましたが、5月11日、「改めて検察庁法の一部改正に反対する会長声明」を発表しました(全国に52ある単位会弁護士会の約9割にあたる46弁護士会も反対の会長声明を発表しており、兵庫県弁護士会も3月25日に「東京高等検察庁検事長の定年延長の閣議決定の撤回を求める会長声明」を発表しています)。

日本弁護士連合会が、同じ問題について2度にわたって会長声明を発表するのは異例のことのようですが、今回の会長声明の核心部分は、つぎの点にあると思います。

当連合会は、検察官の65歳までの定年延長や役職定年の設定自体について反対するものではないが、内閣ないし法務大臣の裁量により役職延長や勤務延長が行われることにより、不偏不党を貫いた職務遂行が求められる検察の独立性が侵害されることを強く危惧する。「準司法官」である検察官の政治的中立性が脅かされれば、憲法の基本原則である三権分立を揺るがすおそれさえあり、到底看過できない。少なくとも当該法案部分は削除されるべきである。

要するに、問題となっている検察庁法改正案は、検察官の定年を63歳から65歳に延ばすものであるだけでなく(この点については日本弁護士連合会を含め、多くの人は反対していません)、政府が「公務の運営に著しい支障が生じる」と認める場合には、特定の検察幹部の定年を68歳まで延長できるという特例が設けられており、これが「憲法の基本原則である三権分立を揺るがす」として批判されているのです。

改正案に問題がないという人の中には、検察官は行政官であり、行政の長である内閣総理大臣が人事に介入できるのは当然などという人がいますが、そのような考えは、検察官の特殊性を踏まえない誤ったものという他ありません。

ロッキード事件がそうであったように、検察官は総理経験者でさえ逮捕・起訴できるという特別の権限を与えられた、唯一の公訴提起機関です。そこが、検察官が単なる行政官ではなく、準司法官と呼ばれるゆえんであり、その人事に時の内閣の過度の介入を認める改正案は、やはり三権分立を揺るがすという批判を免れるものではありません。

改正案のもとでは、政府のお気に入りの検察官は68歳まで幹部検察官として働けるのに、そうでない検察官は65歳で退職させられるという事態が阻止できません。そのような制度のもとでは、68歳まで働きたいと思う検察官は、政府の顔色を伺いながら起訴・不起訴の決定をせざるを得ないということにもなりかねません。

今回の改正案については、元検事総長、元最高検検事をはじめとする少なからぬ検察OBが、改正案に反対する意見書を法務大臣に提出しました。このことも極めて異例の事態です。

意見書では、「今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺ぐことを意図していると考えられる」「しかしながら、検察が萎縮して人事権まで政権側に握られ、起訴・不起訴の決定など公訴権の行使にまで掣肘を受けるようになったら検察は国民の信託に応えられない。正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない」ということが述べられていますが、今回の改正案の問題点、そして、本来、検察庁がどういう組織でなければならないかということを適確に指摘したものだと思います。(掣肘=せいちゅうという言葉は知りませんでしたが、わきから干渉して人の自由な行動を妨げることの意のようです)。

それでも改正が必要だというのであれば、強行採決をするのではなく、じっくりと時間をかけて審議すべきでしょう。

今回、多くの国民が怒っているのは、改正案の内容自体が大きな問題を抱えていることともに、コロナ禍で多くの人たちが苦しんでいる中で、国会には他にやるべきことがたくさんある筈だからです。この点について、日本弁護士連合会の意見書は、「そもそも、検察庁法の改正に緊急性など全くない。今般の新型インフルエンザ等対策特別措置法上の緊急事態宣言が継続する中、かくも重大な問題性を孕んだ本法案について、わずか数時間の議論だけで成立を急ぐ理由など皆無である」と述べています。

安倍首相が星野源さんが歌う「うちで踊ろう」とのコラボ動画をツィッターで配信したことが大きな批判を浴びた際、菅官房長官は、「過去最高の35万を超える『いいね』をいただいている」とコメントしていましたが、検察庁法改正反対のツィートはリツィートを含め5月12日の時点で470万を超えていたのに、この点を問われた安倍首相は、「政府としてコメントすることは差し控える」と述べるだけでした。このような態度は御都合主義との批判を免れるものではありません。

国民の声に耳を傾ければ、強行採決など絶対にできない筈です。

それでも戦争法、共謀罪、カジノ法案の時と同じように国民の声、そして憲法を無視するのであれば、こんな火事場泥棒的なやり方は絶対に許さない、そんな大きな声を上げ続けて行かなければならないと思います。

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