吉田竜一弁護士ブログ

リーマン・ショック時を上回る雇用危機が目前-年越し派遣村を必要としない対策を早急に!

緊急事態宣言が解除され、止まっていた裁判も動き出し、事務所にも新件の相談に訪れる方が少しづつ増えてきました。

もっとも、現時点では、まだ目立って労働相談が増えているという状況はないのですが、厚生労働省の7月7日の発表によれば、、新型コロナウイルス感染拡大に関する解雇や雇い止めが見込みを含めて3万2000人を超えているようで、6月4日に2万人を超えてから僅か1か月で1万人の増加となっています。

雇用情勢の悪化は今後も避けられない見通しで、2008年のリーマン・ショック時を上回る雇用危機が目の前に迫っている状況です。

特に5月25日以降の集計では、解雇、雇止めの対象となって人の約6割が契約社員、派遣労働者といった非正規社員で、非正規社員が雇用の調整弁とされている実態が、ここでも浮き彫りになっています。

2008年のリーマンショックの時は、22万人を超える非正規労働者が企業から放り出されたといわれており、NPO法人や労働組合が日比谷公園につくった年越し派遣村が企業から放り出された労働者の人たちで膨れ上がり、社会問題となりましたが、同じような事態が生じることは絶対に避けなければなりません。

政府は、働く人たちが職を失い路頭に迷うことがないような具体的な対策を早急に講じるべきです。GO TOキャンペーンなどやっている場合ではありません。

また、労働者の実質賃金は年々目減りするなかで、資本金10億円を超える大企業は内部留保を460兆円にまで膨らませています。

大企業は、この内部留保を少しでも切り崩して、正社員だけでなく非正規社員の雇用を守るとともに、下請けの零細中小企業の支援も行い、大企業としての社会的責任を果たすべきです。

もっとも、2009年、リーマン・ショック後に派遣切りが横行した際、労働組合や労働者、その立場に立つ弁護士は、内部留保を少し切り崩せば派遣労働者の雇用を守ることは簡単にできると主張しましたが、大企業が耳を貸すことはありませんでした。

今回、労働者の悲惨な状況を目の当たりにしても大企業が内部留保に手を付けないという姿勢を取り続けるのであれば、政府が内部留保に課税する、優遇されている大企業の法人税の税率を中小企業並みに引き上げるといった措置を講じるべきです。

昨年6月10日の参議院決算委員会で、年金財政の脆弱化が問題となっているなか、日本共産党の小池晃書記局長が、「大企業に、せめて中小企業並みの法人税負担を求めれば4兆円、株で大儲けしている富裕層の所得税の最高税率をあげることで3兆円の財源が出てくる」と追及したのに対し、安倍首相は「それはまったく馬鹿げた提案だ。間違った政策だと思う」などと答弁しましたが、コロナによって生じている緊急事態のもとで、もはや同じような姿勢を取り続けることは許されません。労働者の側には何の責任もないコロナが原因で職を失い、生活することもままならなくなった労働者を放置する政治こそが馬鹿げていると思います。

尚、コロナを理由とする解雇、雇止めは、「仕事がなくなった」「事業の縮小を余儀なくされた」ことを理由とする、いわゆる整理解雇ですが、解雇については、法律によって、きちんとした理由がなければ労働者を解雇することができないとされているところ、この整理解雇については、これまでの労働者、労働組合の闘いにより、①経営上の必要性があること、②希望退職者の募集等、解雇回避措置を尽くすこと、③人選基準に合理性が認められること、④労働組合ないし労働者代表との協議を尽くすこと、という4要件を満たす必要があるとされており、使用者の方でも簡単に行える解雇ではありません。

もちろん、コロナの影響で、本当に重大な経営危機を迎えている企業もあるでしょうし、また、雇用の調整弁とされている派遣労働者、契約社員には解雇を争う場合にも、正社員にはないハードルを越えなければならないのですが、コロナを理由に、解雇、雇止めされた労働者の方、「コロナの影響だから仕方ない」などと簡単にあきらめるのではなく、まずは労働事件をきちんと処理できる弁護士に相談することをお勧めします。

 

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