吉田竜一弁護士ブログ

#日本学術会議への人事介入に抗議する

日本の科学者で組織され、政府から独立して政策の提言などを行う日本学術会議の会員について、菅首相は、会議が推薦した候補者105人のうち6人を除外して任命しました。

日本学術会議法によると、会員は、日本学術会議が候補者を選考のうえ推薦し、その推薦に基づいて首相が任命されることになっているところ、2004年の法改正で会議が候補者を推薦する方式になって以降、首相が推薦された候補者を任命しなかったのは初めてのことですが、任命されなかった候補者は、例えば小沢隆一・東京慈恵会医科大教授が、2015年7月に強行採決された戦争法を国会で「憲法9条に反する」と、松宮孝明・立命館大学教授が2017然に成立した共謀罪を国会で「戦後最悪の治安立法」と批判するなどしてきた人たちで、菅首相の今回の除外が、政権の意に沿わない見解を持った学者を排除したものであることは明々白々です。

しかし、そのような行為は、憲法23条の保障する「学問の自由」を侵害した違憲・違法の行為です。

加藤官房長官は、「首相の所轄で、人事等を通じて一定の監督権を行使することは法律上可能」だなどと発言したようですが、監督権などという言葉は日本学術法のどこにもありません。

1949年に日本会議が発足した際、当時の吉田茂首相は、「日本学術会議は勿論国の機関ではありますが、その使命達成のためには、時々の政治的便宜のための制肘を受けることのないよう、高度の自主性が与えられておる」と言明し、1983年、それまで選挙で選ばれていた日本学術会議の会員を推薦制とし、推薦された者を首相が任命する方式に変更する法改正が行われた際にも、当時の中曽根康弘首相は、「政府が行うのは形式的任命にすぎません。したがって、実態は各学会なり学術集団が推薦権を握っているようなもので、政府の行為は軽視的行為であるとお考えくだされば、学問の自由独立というものはあくまで保障されるものと考えております」と国会で答弁していますが、今回の排除が、歴代の首相の発言や国会答弁と矛盾したものであることは明々白々です。

ちなみに,「制肘(せいちゅう)」の意味は、「わきから干渉して人の自由な行動を妨げる」です。

今回の排除を見て、私は、トランプ大統領が先般亡くなられた連邦最高裁判所のリベラル派のギンズバーグ判事の後任に、人事は大統領選挙の後にすべきだという批判を無視して保守派のエイミー・バレット判事を指名したこと、更に、安倍前首相が、2013年、歴代の内閣法制局長官が、「憲法9条のもとで集団的自衛権行使は認められない」との公式見解を一貫させてきたなかで、自分の立場に極めて近い外務省出身の小松一郎駐仏大使起用を内閣法制局長官に起用し、内閣法制局の封じ込めをはかり、翌2014年に集団的自衛権容認の閣議決定をしたこと思い出しました。

これらの対応は、自分の意に沿う人間をそばに置く、自分と同じ意見にしか耳を傾けないというものですが、自分の意に沿わない人間は排除するという今回の菅首相の対応も根っこは同じです。

排除された松宮孝明・立命館大学教授は「この政権、とんでもないところに手を出してきた」と述べられているようですが、このような政権の横暴を許していたのでは、学問の自由が骨抜きにされるというだけでなく、政権に反対する意見はことごとき聞き入れられない社会になってしまいかねません。

事は排除された方々だけの問題にはとどまりません。

意に沿わない人の意見を聞かない政治は圧政、恐怖政治以外の何物でもありません。

日本学術会議は、早速に排除された6人を任命するよう、首相に求めることを決めたようですが、菅首相は非を認めて、速やかに撤回すべきです。

ツイッター上では、「#日本学術会議への人事介入に抗議する」がトレンド入りし、2日午後7時現在で、このハッシュタグをつけて25万件以上がツイートされているようですが、菅首相が撤回しないというのであれば、撤回せざるを得ないよう、私たちが大きな声をあげていかなければなりません。

今回の排除は既に安倍政権時代の2年前から検討されていたことのようですが、安倍政権の問題点の自覚もないままに安倍政権の継承を明言し、実行に移す菅政権。

前政権に負けず劣らず危険です。

 

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