吉田竜一弁護士ブログ

敵基地攻撃能力の保有と防衛費の増大は平和と私たちの生活を破壊する!

岸田政権は、16日、相手の領域内を直接攻撃する敵基地攻撃能力を反撃能力として保有することを明記した国家安全保障戦略など安保関連3文書を閣議決定しました。

敵基地攻撃は、相手が攻撃していなくとも、攻撃に着手している段階で行使できるとされていますが、日本が敵基地攻撃を行った場合、現に攻撃をしていない相手方からすれば、日本から先制攻撃をしかけられたとして反撃してくることになるのは自明で、これがこれまでの政権が憲法9条のもとで維持してきた専守防衛をかなぐり捨てた、憲法9条、そして平和を破壊する暴挙であることはいうまでもありません。

遠藤乾・東大大学院教授は、「ロシアの侵略に抵抗しているウクライナが世界的に同情されて武器供与などを受けているのは、おおむね自国領土内で防衛しているからだ。日本も戦後、他国を攻撃しないという専守防衛で培った世界的な信用資源がある。その延長線上で防衛体制を強化する方策があるのに、反撃能力を持って自らその信用資源をかなぐり捨てる必要はない」と(15日付東京新聞)、芥川賞作家である中村文則氏が「戦争とは『先にやられた』という口実から始まるもの。日本の敵基地攻撃を『先制攻撃』ととらえられれば、すぐさま日本への本格的な攻撃が始まるだろう」と、自衛の枠内などという敵基地攻撃が、逆に相手から攻撃を受ける危機に日本をさらすことを指摘されておられますが(16日付朝日新聞)、まさにそのとおりだと思います。

そして、敵基地攻撃能力の保有は、当然に軍事費の膨張に帰結します。

安保関連3文書では、2023年度から5年間の防衛費を現行計画の1・5倍以上となる43兆円となることが盛り込まれています。

政府は来年度分の増大については増税で1兆円程度を捻出する方針で、この1兆円は法人税、たばこ税、東日本大震災の復興特別所得税で捻出することが考えられているようですが、復興特別所得税を防衛費に回すなどという考えは、震災から12年経とうとしている現在でも復興がまだまだ終わっていない東北の人たち、被災者の方々の感情を逆撫でにする愚挙と言わざるを得ませんし、法人税を上げるのであれば、それは減り続けている実質賃金を少なくとも元に戻すための物価対策、景気対策にあてられるべきもので、防衛費に使うなどというのは本末転倒です。

また防衛費を43兆円にするというのであれば、当面の増加分を捻出するための1兆円の増税だけでは焼け石に水で、歳出削減で捻出ということになれば、またまた社会保障費が削減されることになるでしょうし、現時点では否定されていますが、消費税、所得税増税に道が開かれれることも必至です。

長引くコロナの影響でズタズタになっている経済状況のもとでの軍事費の増大は、私たちの生活を一層破壊するものであり、正気の沙汰とは到底思えません。

平和と私たちの生活を守るために、専守防衛を投げ捨て、防衛費を現行の1・5倍にする大軍拡には絶対反対です。

 

 

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