広島に原爆が投下されてから79年となった8月6日、平和記念公園で開かれた記念式典で、松井一実広島市長は「心を一つに行動を起こせば、核抑止力に依存する為政者に政策転換を促すことができるはずだ」、「世界の為政者には、広島を訪れ」「核兵器廃絶へのゆるぎない決意を、この地から発信していただきたい」と平和宣言で訴え、湯崎英彦広島知事は「核廃絶は遠くに掲げる理想ではないのです。今、必死に取り組まなければならない、人類存続に関わる差し迫った現実の問題です」とあいさつされました。
湯崎知事は、「人類が発明してかつて使われなかった兵器はない。禁止された化学兵器も引き続き使われている。核兵器も、それが存在する限り必ずいつか再び使われることになるでしょう」とも述べておられますが、ロシアがウクライナ侵攻を続ける中で核の使用をちらつかせ、中国や北朝鮮が核の増強に奔走し、ガザでのジェノサイドを続けるイスラエルの閣僚が、核使用も「選択肢のひとつだ」と述べるような状況下、いつ、世界のどこかで、核が使用されてもおかしくない状況です。
しかし、また核が使用されることになれば、取返しのつかない事態が生じることはいうまでもありません。
平和記念式典で中満泉軍縮担当上級代表が代読されたグレテス国連総長のあいさつでも、広島、長崎の惨事から学んだ、「核兵器のいかなる使用も、壊滅的な人道的結末をもたらすということ。核兵器の脅威をなくす唯一の道は、核兵器の完全な廃絶であるということ。核兵器のいかなる使用も容認できないということ」という教訓を、生かし続けていかなければならないということが述べられていました。
松井市長、湯崎知事、グレテス国連総長は、三人とも、「核抑止論」では駄目だ。核廃絶でなければ、核廃絶が実現されなければ、世界の平和は守れないということを強く訴えただけでなく、為政者にそのための真剣な議論をすることを求めたことになります。
一方、平和記念式典での岸田首相の挨拶では、「『核兵器のない世界』への道のりが厳しいものであったとしても、その歩みを止めるわけにはいかない」ということは述べられたようですが、核兵器禁止条約には一言も触れることがありませんでした。
8月7日の朝日新聞は、核なき世界を訴えながら、米国依存を深める岸田首相の態度は「矛盾」しているということが述べられていますが、いつ核が使用されるかわからない世界情勢のもとでは、核廃絶は直ぐにでも実現されなければならないまったなしの課題です。
8月6日の朝日新聞には、「戦争の準備をするな」という見出しで、「第九条の会ヒロシマ」が主宰した意見広告が掲載されていましたが、政府がやるべきことは、敵基地攻撃能力を自衛隊に保有させて戦争の準備をすることではなく、中国新聞の8月7日の社説が、「ウクライナやパレスチナ自治区ガザで戦闘が続き核兵器が使われるリスクは現実味を帯びている。惨禍を繰り返さないために、首相は核なき世界への針路を再考すべきだ」と述べているとおり、唯一の被爆国として「核廃絶」の先頭に立つことです。そのためには、8月6日の中国新聞の社説が、「東アジアの安全保障環境は確かに厳しい。しかし、米国の差し出す『核の傘』をありがたがっていて、核廃絶に向けた議論を主導できるのだろうか」と述べるとおり、米国依存から脱却しなければなりません。