食道がんの手術をしてから体力的な問題で夜に仕事をするのが結構難しく、仕事が立て込んだときは土日をつぶさなければならないような状況で、先週末はたまった起案を片付ける予定にしたのですが、24日の金曜日、神戸での会議を終えて立ち寄った本屋で、池井戸潤氏の「俺たちの箱根駅伝」の上下巻が発売されているのを見て(4月末に発売されていたようですが全く知りませんでした)、迷わずに購入、起案を横において土曜日曜で一気に読破しました。
池井戸潤氏は2011年の直木賞受賞作「下町ロケット」を読んでからのファンです。
元銀行員の経歴をいかした半沢直樹シリーズのような企業小説だけでなく、ルーズヴェルト・ゲーム、陸王、ノーサイドゲームのようなスポーツを題材にしたものも少なくないのですが、「俺たちの箱根駅伝」はタイトルのとおり、箱根駅伝にかける選手、監督、そして箱根駅伝を中継するテレビ局スタッフたちを描いたものでした。
文句なく面白かった。
個人的にはテレビ化もされた前作のハヤブサ消防団よりもずっと面白かったと思います。
池井戸作品の優れたところは、一言でいうと、作品で描かれている真摯に働く人、真摯にスポーツに取り組む人たちが幾多の困難を克服して最後には報われるところ、読後の爽快感にあると思っていますが、「俺たちの箱根駅伝」でも、最後は少し出来すぎのような気がしないでもありませんが、箱根駅伝にかける選手、監督、その思いを純粋に中継しようとするテレビ局スタッフの姿勢が伝わってくる作品でした。
箱根駅伝自体ももちろん大好きで、2012年の正月、長女が受験のときに、最後の追い込みを邪魔しないよう長男と2人で東京に行き、2014年の正月は家族全員で東京に行って、元旦は国立競技場でサッカー天皇杯の決勝戦を観戦した後、2日、3日は箱根駅伝の往路のスタート地点、復路のゴール地点の沿道で選手を応援したことがありますが、沿道で応援する人の多さにとにかくびっくりしました。
(2014年1月2日 JR品川駅前の長女、長男)
箱根駅伝にはそれだけ人々を引き付ける魅力があるのだと思いますが、「俺たちの箱根駅伝」で少し残念だったのは母校の中央大学があまり登場しなかったことでしょうか。
母校の中央大学、2023年は藤原監督のもとで復活の狼煙を上げ、総合2位だったのですが、年末に体調不良者が続出した2024年は残念ながらシード権を確保できず、来年2025年は予選会からの出場を目指すことになります。
大変な夏を送ることになるのだろうと思いますが、再復活してくれることを祈念してやみません。
もう少し体力が回復すれば、何年か後の正月は妻と2人で小涌園に泊まって沿道で選手に声援を贈りたいものです(宿を確保することは至難なのでしょうが)。
さて、池井戸作品のよいところは仕事でも競技でも真摯に取り組む人たちが最後には報われるところだと述べましたが、実質賃金が2年連続でマイナス、非正規労働者が再び増加しているといった現状に鑑みたとき、現実の社会は残念ながら真面目に働いている人たちが報われるような社会にはなっていないと言わざるを得ません。
時期は不確定ですが、今年、かなりの確率で衆議院選挙があります。
自分の一票だけではどうにもならないなどと考えるのではなく、企業や富裕層を優遇するのではなく、真面目に働く人たちが報われる社会を実現してくれる政治が実現されるような一票を投じたい、私はそう考えています。
(アイキャッチ画像は2014年1月3日銀座付近の沿道)