モデルのローラーさんがインスタで呼びかけ、作家の平野啓一郎氏やウーマンラッシュアワーの村本大輔氏らがこれに応じた、辺野古の新基地建設工事を来年2月の県民投票まで停止するようトランプ米大統領に求めるホワイトハウスの請願ウェブサイト上の署名数が12月18日までに目標の10万を超えましたた。規定数である10万を超えた署名については米政府は見解を公表しなければならないようになっているようです。
日本時間の12月18日現在、11万4055筆が集まっていることを琉球新報が報じていますが、現在、その数は18万を突破しているとのこと。
ローラーさんが署名を呼びかけたことについて、ネットでは批判する人も少なくないようですが、「反日的」「芸能人が政治活動をするな」という何の根拠もない感情的な批判は論外として(これについては、爆笑問題の太田光氏の「すべての表現は政治的メッセージを含んでいる。ましてローラのいるファッション業界には政治的メッセージがある。ローラが世界的なファッション業界に出ようという意識があるなら当たり前のこと」との発言が的を射ていると思います)、批判の中には、「辺野古移設が実現しなければ世界一危険な普天間基地は返還されない」というものがあります。
しかし、安部首相が当時の仲井間知事に2019年2月の普天間運用禁止を約束したのは2013年のことですが、ロックリア米太平洋軍司令官は、2014年9月の米国防総省で開かれた記者会見で、日本側から米軍普天間飛行場の5年以内の運用停止の要請を受けていないことを明らかにしているだけでなく、2017年6月には、当時の稲田朋美防衛相も、辺野古が完成しても、緊急時の米軍による民間空港(那覇空港)の使用ができなければ、普天間基地(同県宜野湾市)は返還されないと国会で述べていました。
要するに、辺野古「移設」という言葉は政府が使っているだけのことで、辺野古基地建設が新基地の建設に他ならず、辺野古ができても(当分できないというか、できる見込みもたたないようですが)、代替施設の提供を条件とする限り、那覇空港を米軍に使用させるという無茶苦茶を認めない限り、普天間基地の返還は実現しないのです。
玉城デニー知事を誕生させた沖縄県民の辺野古NOの意思は明確であるというだけでなく、朝日・毎日・読売・共同通信のどの世論調査においても政府が強行した辺野古への土砂投入に反対する国民の声は過半数を上回っています。
実現すべきは、新基地建設の即時中止と普天間基地の無条件返還であり、普天間のために辺野古は仕方ないなどという考えには何の根拠もないといわなければなりません。
ちなみに、先日、テレビを見ていたら、安部内閣が行った防衛大綱の見直しについて、立憲民主党の枝野幸男代表が「今なぜここまで必要なのか全く説明がつかない中身」と、共産党の小池晃書記局長が「時代錯誤の危険な計画」と批判していたのを、「野党のお偉いさんに言うわ、家に鍵掛けんなよと。携帯、PCもセキュリティすんなよって」と揶揄している芸人の方がおられましたが、的はずれの批判、揶揄という他ありません。
今回の防衛大綱の見直しは、単に家に鍵をかける、かかっている鍵を二重三重にして頑丈にする、携帯、PCにセキュリティかけるという類のものではありません。
2019年度から5年間での防衛装備品の調達額は27兆4700億円になるとのことですが、その中身は、護衛艦「いずも」を事実上「空母化」する、一機あたり約100億円の米国製ステルス戦闘機F35を新たに105機購入する、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を導入するといったもので、憲法9条があるために「敵基地攻撃能力」を大綱に明文化をすることはできなかったようですが、これが、もはや家に鍵をかけると評価できる「専守防衛」の枠を大きくはみだした、家(日本)から遠く離れた場所に出て行って積極的に米国と一緒に他国を攻撃することを前提にした改定であることは明々白々です。
こうした改定が本来、憲法のもとで容認できるものでないこともいうまでもありません。
12月23日、平成天皇は、「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵」していると述べられましたが、今回の防衛大綱の見直しは、つぎの時代には戦争が起きかねない内容になっているのではないかと危惧されるもので、野党が批判することは当然のことと考えられます。
尚、金子勝慶応大学名誉教授が、「天皇陛下は記者会見で、沖縄のくだりで声を震わせて『沖縄は、先の大戦を含め実に長い苦難の歴史をたどってきました』『沖縄の人々が耐え続けた犠牲に心を寄せていくとの私どもの思いは、これからも変わることはありません』と語る。アベは聞いているのか?」とツィートしたのに対し、「天皇の政治利用」と批判する人が結構おられるようで、私にも同じ批判があるのではないかと思いますが、天皇の政治利用の禁止は憲法上の要請で、憲法の名宛人は内閣総理大臣等の権力者ですから、私立大学の名誉教授のツィートや私のような一弁護士のブログを天皇の政治利用禁止の原則に抵触すると批判することも、これまた的外れの批判というしかありません。
本題に戻りますが、辺野古埋立停止を求めるホワイトハウスへの嘆願署名の期限は来年1月7日。まだ、間に合います。目標の10万は既に突破しており、数がすべてではありませんが、多いに越したことはありません。私も署名しました。是非皆さんもご協力ください。尚、「辺野古、ホワイトハウス、嘆願書面、やり方」で検索すると、わかりやすく署名のやり方を教えてくれる沖縄タイムスのページがあります。
最後になりますが、平野啓一郎氏の「ある男」を読みました。平野氏は、政治的な発言も積極的になされている作家で、その発言には個人的にはスカッとするものが少なくなく、辺野古署名賛同の意思を明確にしたことについても「さすが」と思った次第ですが、作品を読むのは初めてでした。贔屓の池井戸潤氏の作品のように一気に読める作品ではなく、ところどころ考えさせられて立ち止まりながら読み切った作品でしたが、池井戸作品とは別の意味で面白かったです。的外れかもしれませんが、主人公の弁護士と妻子の関係、主人公の依頼者とその子ども関係の描写が好きでした。来年は、「マチネの終わりに」に挑戦します。
皆さん、よいお年をお迎えください。