松坂桃李さん主演の映画「新聞記者」が非常によい映画だったことは、このブログでも書きました。
先日、大分に帰省した際、駅ビルの映画館で1日1回、過去の名作を上映しており、姫路に戻る日の上映映画が1974年に製作された「砂の器」であったため、これを観て帰ってきました。
DVD等では何回か見直しているものの、スクリーンで観るのはまさに45年振りでしたが、やっぱり、よかった。亡前田弁護士が一番好きな映画でしたが、私も「砂の器」を上回る日本映画はまだないと思っています。
ところで、「砂の器」の上映前、「蜜蜂と遠雷」の予告編が流され、松坂桃季さんが出演することを知り、これも観なければと思いつつ、まずは原作からと読んだのですが、原作、本当に面白かった。
恩田陸さんの書かれた「蜜蜂と遠雷」は、2017年度の直木賞受賞作。この年の本屋大賞も受賞しており、直木賞と本屋大賞のダブル受賞は史上初とのことですが、なかなかの長編であるのに、一気に読むことができました。同じく直木賞受賞作である池井戸潤氏の「下町ロケット」と作風は全然違いますが、読みやすさ、面白さではお気に入りの「下町ロケット」等の池井戸潤氏の作品を彷彿させる作品だったと思います。
そして原作を読み終えたところで、先日、公開されたばかりの映画を観てきたのですが、これもなかなかのものでした。ラストのコンクール本選の描写は、原作に結構手が加えられていますが、その他のシーンも含め、原作のいいところがよく再現されていたと思います。恩田陸さんが「映画化は無謀、そう思っていました。『参りました』を通り越して『やってくれました!』の一言です」と言われているのも頷けます。
もっとも2時間の上映時間で(あの原作を2時間におさめたというところが凄いのですが)、原作から削られているエピソードも少なくなく、原作を読んでいない人は映画のよさを理解できるのだろうかという気持ちもあり、原作を超えた、原作を読まなくとも十分感動できる「砂の器」とは、そこが少し違うのではないかなどと思っていましたが、原作を読まずに一緒に映画を観た妻は「よかった」「原作を読んでいなくとも自分なりの解釈で十分楽しめる」と言っており、原作を読まずに観ても大丈夫なのだと思います(個人的には、是非、原作を読んでから観て欲しいと思いますが)。
音楽(クラッシク)に対する知識がなくとも十分楽しめる原作、そして映画ですが、4人のピアニストの中では、他の3人に比べると天才色の薄い松坂桃季さん演じる高島明石が一番好きです。やっぱり自分自身が天才肌ではないからなのでしょう。
また、演奏シーンや4人のピアニストの心の動きを描写する場面をおくと、原作の中でも、映画でも、「1日練習しなければ自分にわかる。2日練習しなければ批評家にわかる。3日練習しなければ聴衆にわかる」という言葉が一番印象に残っています。
フランスのピアニストであるアルフレッド・コルトーの名言らしいのですが、自分に当てはめると、「仕事を1日さぼると自分にわかり、2日さぼると裁判所にわかり、3日さぼると依頼者の信用を失う」というところでしょうか。
もっとも、来年還暦を迎える年齢になり、日ごろの運動不足もあって体力の低下には如何ともし難いところがあり、時々は休まないと仕事を続けることもできない状況ですが、休むこととさぼることは違うのだと自分を納得させて(それがダメなのかもしれませんが)、頑張るしかありません。
追伸
クラッシクを聴く機会は余りなく、聴いているのは専ら60年代、70年代のロックですが(繰り返しになりますが「蜜蜂と遠雷」はそれでも何の問題もなく入り込める作品です)、今日、エリック・クラプトン、ジャック・ブルースと共に伝説的グループ「クリーム」を結成したドラムのジンジャー・ベイカーの訃報に接しました。合掌。