2019年8月にも「最低賃金は全国一律1500円が不可欠」とのタイトルでブログを書きました。
多くの国では、最低賃金は全国一律に決められていますが、わが国の最低賃金は地域別(都道府県別)に決められているところ(G7では日本とカナダだけのようです)、この地域別最低賃金については、既に5年前から批判されていたものの、なかなか改正されるきざしが見られないのですが、本日の朝日新聞朝刊は、一面で、「『最低賃金、一律に』広がる」の見出しで、「地域でばらつきがある最低賃金について、『全国一律』を求める意見書の採択が地方議会で広がっている」として、全労連の調査では、2923年に80議会で採択され、年ベースで過去最多となった旨が報じられています。
地域別を採用する理由として、大都市圏と地方では生計費が異なるからだという説明がされてるのですが、朝日新聞は、「生活費大差ないのに」として、25歳単身男性の1か月の生活に必要な費用は、東京都北区の場合が24万9642円であるのに、高知市の場合は24万9699円で、東京よりも高知市で生活する場合の方が必要な費用が高い旨も報じています。
5年前のブログでは、「東京一極集中が問題にされていますが、地方の最低賃金が文字通り最低レベルにとどまっていることが、労働者人口の大都市部への流出、地方の高齢化・過疎化、地域経済の疲弊に拍車をかける一因となっていることは明らかで、地方の活性化を図るためには、最低賃金について地域別を改め全国一律の最低賃金が定められなければなりません」と書きましたが、朝日新聞の記事も、「全国一律」を求める意見書の採択が地方議会で広がっている「背景には都市との賃金格差で人口が流出し、地方の人で不足が進む危機感が強まっていることがある」と述べています。
私の5年前のブログも全労連等の主張の受け売りで、全労連はこの間一貫して主張してきたことですが、地域別最低賃金制度は、東京一極集中、大都市と地方の格差拡大に拍車をかけ続けているのです。地域の活性化を実現するのであれば、地域別最低賃金制度は「全国一律」の最低賃金に改められなければなりませんし、また現在の最低賃金が時間1000円を超えているのは、東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫だけで最高は東京の1113円ですが、最低賃金の額も速やかに時間1500円まで引き上げられなければなりません。
最低賃金1500円でも、月173時間働いた場合の月収は25万9500円、年収は311万4000円で、何とか人並みの生活を維持できる収入が確保できるに過ぎないのです。
5年前のブログには、「最低賃金の引き上げや中小企業支援などを訴え続ける、主に若者を中心にした市民グループ“エキタス”が、最賃1500円が実現したら何をしたいかをネットで尋ねると、『我慢せず病院に行く』『手元に残っている薬で我慢しない』『病院に行ける』『1日の食費を300円から増やす』『子どもに牛肉を食べさせられる』『長時間のバイトをしないで済む』といった声が多数集まったようです。真面目に働いている人たちが、病気になっても病院に行けない、まともに食事もできない世の中は絶対に間違っています」と書きましたが、最低賃金は労働者の生活の安定に資するものでなければならないのであり(最低賃金法1条)、最低限度の文化的な生活も営めないような賃金を法的に適正な最低賃金などと評価することは到底できません。
もちろん、全国一律の最低賃金の制定、最低賃金の増額は中小企業、特に地方の中小企業に影響を与えますが、これも5年前のブログに書いたとおり、戦闘機の爆買いをやめる、大企業に中小企業並みの課税をする、株で大儲けをしている富裕層への優遇措置をやめる、こうしたことで、最低賃金のアップが中小業者の経営を圧迫することのないような中小企業への支援は簡単に実現できます。
この10年間で180兆円膨らみ、510兆円を超え、日本のGDPに近づくほどの巨額なため込みとなっている大企業の内部留保に課税することによっても、相当な財源を捻出することが可能なはずです。