吉田竜一弁護士ブログ

「小泉悠さんと話そう」Ver3に参加してきました!

9月13日、三宮コンベンションセンターで開催された、小泉悠さん(東京大学先端科学技術研究センター准教授)と話そうVer3「国際秩序が崩壊した時代、みんなと語り合う私たちの未来」に参加してきました。

2024年4月19日に開催されたVer1には参加できたものの、Ver2は兵庫県民法協の総会と重なり参加できず、小泉さんのお話をお聞きするのは今回が2回目でした。

今回のVer3、二部形式で、一部、二部ともそれぞれ小泉さんが基調報告を行った上で、80名程あった参加者を6つのグループに分け、グループ内で小泉さんの基調報告を踏まえた対話を行い、グループ対話の内容を全体で共有した上で、小泉さんにコメントしてもらうというもので、この方式で行うということを聞いたとき、対話がうまくいくのかかなり心配していたのですが、私のグループでもほとんどの人が発言するなど心配は杞憂に過ぎませんでしたし、対話内容を全体で共有して小泉さんにコメントしてもらうことで、講演会のような一方通行ではない、まさに「小泉さんと話そう」とのタイトルどおりのセミナーとなって、とてもよかったと思います。

さて、肝心の基調報告、対話の中身ですが、小泉さん、Ver1の講演依頼を「9条の会とは少し考え方が違うが、議論することが大事」と快諾してくださったとおり、「戦争は絶対にダメ」という結論では一致していますが、では、我が国の平和と安全をどのようにして守るのか、あるべき安全保障のあり方については9条の会の私たちとは相当考えを異にします。

今回の基調報告やコメントにおいても、小泉さん、優雅な前文、豊富な人権規定を持つ日本国憲法は変えるべきではないが、9条2項だけは改正(削除して)、少子化が進む日本では自衛隊員を増やす展望は持てないので、量より質の考えのもとに軍事力を増強すべき、防衛費はGDP比2%になるが諸外国は4%であり、少なくとも3%まで増やして長距離ミサイルも保有すべき(但し、多くの国民が考えているとおり、我が国では核は保有すべきではない)、そうしないと中国、北朝鮮、ロシアの現状を踏まえた現在の国際情勢のもとで我が国の平和と安全は守れないという立場を鮮明にしておられました(少なくとも、私はそのように理解しました)。

興味深かったのは、対話内容を全体で共有する場で15歳の参加者(お一人だけでしたが15歳の参加者があったこと自体で企画していただいた意味があったと思います)が、「抑止力としての軍事力は下げると自爆してしまうことになるので、ある程度は上げて、なめられないようにすることが大事ではないか」と発言されたのに対し、9条の会に所属するご年配の女性が9条2項改憲論を批判し、近隣国にも日本国憲法9条と同じ規定を定めさせるような活動をすべきという趣旨の発言をされていたことでした。

やっぱり多くの若い人たちは、9条の会を支えている私たち高齢者と異なり、平和を守るために抑止力としての戦力を持つ人は現在の国際情勢のもとでやむを得ないと考えているようですが、そうすると、9条改憲のための国民投票が行われた場合、9条は変えられてしまうことになるのではないか、やはり憲法改正国民投票は絶対に阻止しなければならないという気持ちにもなりました。

小泉さん自身、核保有は否定されておられましたが、私は、抑止力論を徹底すれば、相手方から攻められないようにするためには核を保有すべきだという議論に行きつかざるを得ないと思いますし(小泉さんも、ロシアの軍事評論家の最もリベラルな人でも、戦力は減少させるべきだが、核の保有は当然の前提という立場に立っているとのお話をされましたが、抑止力論ではそういう結論に至らざるを得ないのではないでしょうか)、唯一の被爆国である我が国が核を保有することは絶対にあってはならないことだと思いますし、また、小泉さんは、9条2項以外の憲法は堅持するとの立場を表明されておられましたが、戦力不保持を定める9条2項を変えてしまえば、緊急事態条項が不可欠となるだけでなく、緊急事態(戦時)には人権の制限もやむを得ないというふうに憲法を変えてしまうこと、更には徴兵制の導入も認められるということになって(小泉さんは自衛隊員を増やすことは考えられていないようでしたが、少子化が進む中、現在の自衛隊員を将来も確保しておこうとすれば、やはり徴兵制を導入するのが一番手っ取り早いのではないでしょうか)、現行憲法を維持すること自体ができなくなってしまうのではないかとの考えを払拭することができません。

また軍事費をGDP比3%にするということにでもなれば、軍事費捻出のために社会保障費や医療費等々がこれまで以上に削られることになることも明らかで、私たちの暮らしにも深刻な影響を与えることになることが不可避と思いますが、抑止力のための戦力を増強させることに賛成の人たちは、そこをどう考えているのでしょうか。

最後に、小泉さんは、ネット上でよくみられる改憲派、護憲派が相手を「サヨク、お花畑」「ネトウヨ」と誹謗し合うのではなく、お互いに結論は「戦争はダメ」という点で一致しているのだから、戦争を回避するためにどういう手段を取るべきかについて建設的に議論を尽くすことの重要性を訴えられていましたが、この点はVer1の時も思ったことですが、本当にそのとおりだと思います。

Ver4が企画されることを期待していますし、その際には、機会があれば、上述した9条改憲論、抑止力論への疑問を小泉さんに質問してみたいと思います。

尚、Ver1での小泉悠さんのお話については、「小泉悠が護憲派と語り合う安全保障」という本になっています。

護憲派の人でも改憲派の人でも安全保障について真面目に考えるきっかけを作ってくれる本です。是非、ご一読ください。

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