吉田竜一弁護士ブログ

消費税増税を中止して、大企業、富裕層への優遇措置を見直すことは馬鹿げているのか

金融庁の金融審議会が公的年金以外に夫婦で老後に2000万円の蓄えが必要と試算した報告書を提出したものの、安倍政権がこれを受け取らなかったことが問題とされていますが、報告書を受け取らなかったからといって年金だけで老後を送ることが保障されるわけではなく、逆に、少子高齢化が続けば必然的に支給額が減少するマクロ経済スライドのもとで、基礎年金(国民年金)が最終的に7兆円削減されること、老後不足するのは2000万円ではなく、3600万円であることが明らかになっています。

そうした中、6月10日の参議院決算委員会で、日本共産党の小池晃書記局長が、「マクロ経済スライドを廃止すべきだ。大企業に、せめて中小企業並みの法人税負担を求めれば4兆円、株で大儲けしている富裕層の所得税の最高税率をあげることで3兆円の財源が出てくる」と追及したのに対し、安倍首相は「それはまったく馬鹿げた提案だ。間違った政策だと思う」と答弁しました。

この動画の再生回数は既に500万回を突破しています(まだ、御覧になっていない方、ユーチューブで御覧下さい)。

第二次安倍政権が発足した2012年時点では約300兆円だった大企業の内部留保は、安倍政権のもとでの大企業優遇税制によって2017年度では100兆円増えて初めて400兆円を突破しました。

また我が国の税制は所得が高くなるほど税率が高くなる累進課税が原則としている筈ですが、所得税の負担率は所得1億円までは負担率が上昇していくのに、1億円を超すと負担率が下げっていく富裕層優遇になっています。特に年間所得50億円超の層の所得の9割以上は株式譲渡益ですが、株式譲渡益に対する税率は、アメリカのニューヨーク市、イギリス、ドイツは約30%、フランスに至っては約60%なのに、日本は20%に過ぎません。

小池晃書記局長の指摘は、内部留保を取り崩せとまでいうものではなく、ここまで内部留保を膨らませている大企業に中小企業と同じ課税をしろというものに過ぎませんし、富裕層に対する課税もせめて欧米並みにしろというものに過ぎません。

大企業や富裕層に対し、特別の優遇措置を見直すべきという提案を「馬鹿げている」と切り捨て、富裕層も低所得者層にも同じ負担を強いる、本来の累進課税の原則からすれば不公平極まりない税金である消費税増税は強行しようとする安倍政権、その目が普通に暮らしている、暮らそうとしている国民ではなく、大企業、富裕層の方に向いていることは明らかです。

もっとも安倍政権が見ているのは大企業、富裕層だけではありません。

安倍首相は、国会閉会を受けての記者会見で、「年金を増やす打ち出の小槌はない」「(年金給付の水準を抑制する)『マクロ経済スライド』は必要だ」と述べたようですが、「打ち出の小槌はない」との言葉に、「えー」と驚いた人も少なくなかったと思います。

北朝鮮から発射された大陸弾道ミサイルを撃ち落とすために、秋田と山口に配備が予定されている陸上イージス(イージス・ショア)、何故、秋田と山口なのかといえば、北朝鮮から発射された弾道ミサイルが、ハワイに向けられた場合は秋田の上空を、グァムに向けられた場合は山口の上空を通過するからという、まさにアメリカのために配備される陸上イージスは2基の取得費が2350億円、30年間の維持費に5000億円かかると言われています。

また、ドイツは購入しないことに決めたものを、まるでアメリカの在庫一掃セールに協力するが如く、やはりトランプ大統領の肝いりで購入する147機の戦闘機F35は、購入費、維持費で6兆2000円かかると言われています。

これだけの財源があれば、年金の脆弱性に対応できるだけでなく、最低賃金全国一律1000円の実現、待機児童の解消等々、様々なことができることは言うまでもありません。

トランプ大統領に言われたことについては打ち出の小槌があるのに、真っ先にやるべき、雇用、福祉、社会保障の問題は放置したまま。

結局、安倍政権が、大企業、富裕層、そしてアメリカの方しか見ていないことは明らかだと言わなければなりません。

今度の参議院選挙、しっかりと国民の目線で、国民の方を向いている、国民と広く結びついている、そんな政党を選びたいと思います。

 

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